『半島へ、ふたたび』

蓮池薫著。工作員に拉致されて24年間北朝鮮で過ごし、02年に帰国したあの蓮池さんのエッセーです。最近は、韓国語講師や翻訳業でご活躍のようです。はじめての海外旅行として韓国に取材に行き、ソウルの町を歩きながら「恨」の国の歴史観や韓国人の米国に対する複雑な感情、自身が翻訳した韓国人作家たちとの交流などなどを、つぶやくような感じで語っています。

蓮池さんの本だから、もしかしたらかの国でのおぞましかった日々についていろいろ書いているかも?と思いますが、まだ帰国できずにいる方々の存在ゆえでしょう、衝撃的?な記述はあまりないです。おそらく蓮池さんは書きためているでしょうが、まだ語る時期ではないんでしょうね。

多少、昔に触れている部分もあります。例えば、平壌ではじめて公衆電話を見たときの話。電話の使い方は聞いて知っていたけど、電話帳が公開されていないうえ、かける相手もいない。でも珍しかったから受話器を耳に当てたり、ダイヤル回してみたりした。そうしたら、秘密の電話をしていたのではと密告された、という話です。電話をかける相手がいなかった、とさらりと書いてあるのがかえって胸をつかれます。

ソウル旅行の中で、蓮池さんが再認識したのは、南と北で体制は異なるが、衣食住や社会・生活の伝統的な部分はほとんど変わらないこと。北では、伝統文化の継承は、政治的な意図のもとに行われるが、南では国民の自然な感情と自発的な努力に基づくこと。そして、人間には、自由闊達な雰囲気が一番なのだということ。

失われた時間を取り戻すには、韓国語を武器にチャレンジしていくしかない。半生を奪った北を見返したい。でも、大手出版社で翻訳の機会を与えられたといって、記者会見なぞ開くのは物欲しそうに見えないか?拉致されたままの方々がいるのに、自分だけがうまくいっているように見えないか?と思い悩んでいます。読者に、どうか拉致事件を忘れないでほしい、と訴える蓮池さんが、何の遠慮もなく書きたいことを存分に書ける日が早く来るのを願います。
by itsumohappy  at 22:29 |   |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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