『資本主義はなぜ自壊したのか』

中谷巌著。副題は、「「日本」再生への提言」。(集英社(2008年12月))
職場にあったのでざっとだけど読んでみた。ちょうど1年前の出版ですね。著者がこれを書いている途中、金融危機が起きました。この本は、小泉構造改革の片棒を担いで経済的規制撤廃を主張していた著者の「懺悔の書」なんだそうです。経済学者としての分析ではなくエッセーに近いです。長い。日本経済を活性化するにはグローバルスタンダードに合わせることだと著者は思っていたけれど、市場至上主義がもたらした現在の様相を見るに、社会全体の豊かさを作り出すためには、やっぱり政府の適切な介入が必要である、という(今更ながらの平凡な)結論をいろんな表現でえんえん述べています。

ブータン、キューバ、幕末日本の庶民などの例を挙げて、貧しくとも人々は幸せそうに暮らす社会がある/あった、とか言われてもねぇ。「市場原理は本質的に悪魔のシステム」だから我々は古きよき時代の近江商人のようになるべき、という書き方まではしていないけれども、人を出し抜く文化がない日本の価値観を世界に今こそ発信しなければ、みたいな論調が中盤続きます。

グローバル資本主義のもとエリートが大衆を搾取した結果、人心が荒廃して異常犯罪が増えてきた、と書くならバックデータが要ります。あと、日本が経済大国になる上での功労者である後期高齢者の医療費はただにして、安心して余生をお過ごし下さいとするのが為政者であろう、とかうちのお母さんが言うような話を展開するのはちょっと・・(--)。

今後日本がとるべき方向性や政策として著者が提案しているのは、環境分野での貢献、基礎年金の財源の消費税方式への転換、還付金つき消費税、地方分権の推進等です。普通っぽい。

出版から1年経っているせいか、もうひとつぬるさを感じる本ですが、「損して得取れ」など(かつての)日本人の美質を大事にしようとか語る著者は、それこそ古きよき普通の日本人みたいでなんかいいなぁとも思うのです。賢くない人から賢い人へお金が流れるしくみが資本主義、と(正論でも)事もなげに言う某勝間氏などより好感が持てるのです。

あ、そうそう中谷氏も、規制改革こそ日本を活性化する手段という「耳障りのいい話」に騙された日本の社会は破滅につながりかねない云々・・と書いていましたねぇ。
by itsumohappy  at 23:50 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

こんばんは
著者は、留学当時に米国にいた、社会を支える豊かな中産階級がすごくうらやましかったようです。その中産階級が消えて、貧と富しかいない格差社会の到来を見、あまりにも自分はアメリカ的価値観を信じすぎていた、ナイーブだったと書いていますが、学者の皆さんはけっこう前から「モラルなき経済活動」がもたらす結果をちゃんと予測していただろうと勝手に想像します‥。
by hiro 2009/12/12 00:58  URL [ 編集 ]

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by  2009/12/11 11:01   [ 編集 ]
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