『戦後日本の保守政治』

内田健三著。副題「政治記者の証言」(岩波新書)。著者は、当時、共同通信政治部記者でした。  

「・・・ちかごろよく、「国民不在の政治」という声が聞かれる。ともすれば政治の現状が、「国民の、国民のための、国民による政治」という、民主政治の原理と理想から遊離しがちであることを嘆くあまりの表現であろう。・・・しょせん国民は、「みずからにふさわしい政府と政党と政治」しかもちえないのである。」

↑これは、この本(1969年刊)のはしがきの一部です。
日中国交回復も沖縄返還もなされていない頃の古い本なので、どうかなぁ?と思って読みましたが、歴史的な流れの記述も多いのでまあまあ読めたよ。70年安保と沖縄返還交渉を目前にした当時の日本の状況は、「危険な新段階」へ移行するのではないか、と著者は終章で危惧しています。それは具体的には、「安保依存体質から自主防衛への移行の可能性」及び「保守勢力内に芽生え始めた核武装志向」に対する懸念なのですが、アジアや世界の情勢は変化しても、これら安保を巡る問題・論議は今に続いています。

対日講和条約(51年)の全権団員だった宮沢喜一氏は、講和条約調印の晩、「今後20年ぐらいの間、日本は一種の「綱渡り」だなあと感じた」と語ったそうです。その「綱渡り」の戦後政治のバックボーンとなったのが、「安保国体論」。東西冷戦のさなか、全面講和の理想を捨て対米従属によって国力回復を目指した吉田外交の所産です。

本書には、戦後(この本では約20年間)政治の中での「保守、革新、国民大衆の3要素の緊張と緩和がおりなす起伏」が順を追って記されています。大まかに書くと・・・、
保守本流とは、安保体制派で、一般に吉田・岸・池田・佐藤につながる系譜である。内政において権力は官僚機構に支えられた。(吉田首相が、49年1月の総選挙時に官僚の政界導入を試み、この選挙で、政府が与党国会を支配するという保守政治の原型が形成された、とあります)
政局の安定を願った財界の要請により55年、単一保守党の体制が確立。安保については、60年の改定で駐留米軍の日本防衛の義務規定、事前協議制を導入。安保闘争後、権力は、ぎらついた「反動的支配」から寛容と忍耐の「進歩的管理」へ転換。所得倍増・高度成長政策が生み出した新中間層を革新から引き離し、体制内に組み込んだ。安保絶対論と安保効用論との間に揺れ動いたのが戦後の保守政治である。
・・・という感じです。保守合同については、「永久政権を予想することになり一種のファシズム。多数の上に安座し、政治全体が後ろ向きになるだろう」(宇都宮徳馬)という声が紹介されています。

著者は、そもそも平和憲法の下で特定国との軍事条約を結ぶという安保体制の成立自体に矛盾があり、安保条約は特定の国の駐留を認め、基地提供をする片務的なものにならざるをえない、と指摘しています。
今、政権交代を見据えてなのか何なのか、米軍による核持込みや沖縄返還を巡る当時の政府間交渉のなかでの密約に関して元政府関係者たちが証言しています。矛盾した体制においては、国民に明らかにできないつじつまあわせもあったということでしょうか。

保守支配体制の確立にはそれなりに長い歴史がありますね。これから政権交代があるのかないのかわかりませんが、対等な日米同盟とか官僚政治からの脱却とか聞いても何だかぴんと来ない。かといって従来の保守政治体制のままではあまりよろしくない気はしますが・・。
by itsumohappy  at 23:05 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

脱保守

FORZAさん
いっときは変化に期待しようと思っても、昔と違って高度成長とか
夢を持てる時代じゃないから、一度試して結果がおもわしくないと
すぐそっぽ向かれてしまうかも・・。英国みたいな感じで「政権交代」
するスタイルになるまでどれくらいかかるんでしょうね。
by hiro 2009/08/11 23:14  URL [ 編集 ]

保守体制は嫌いです。

自民のマニフェストは「不満」、民主のマニフェストは「不安」だそうですね。
確かに言えてる。
でも、今800兆の借金があるのは、自民のせいですよね?
組合後ろ盾の民主がどこまでやれるか知りませんが、一度試してみては?
公約を守れなかったら、下野するとまで言ってるんだから、ある意味面白いじゃないですか!
by FORZA 2009/08/11 04:15  URL [ 編集 ]
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