『日本産業社会の「神話」』  

小池和男(法政大学名誉教授)著。「経済自虐史観をただす」という何だかすごい副題ですが、それほど糾弾調でもない。論文とエッセーの中間みたいな、どちらかというと気軽に読める本。

タイトルにある「神話」とは、古くから語り伝えられながら根拠があやしい事柄のことです。著者は、過去、日本や米国で行われたアンケート調査や著者自身の見聞をもとに「ささやかな」比較検討を行うだけでも、日本における「集団主義」、「個人間競争のとぼしさ」、「長時間労働」、「企業別組合」等々が「神話」の類にすぎないことがわかると主張しています。そして、そのような「神話」に基づく政策や企業の方針は社会に損失をもたらす、と指摘しています。

冒頭、日本人が集団主義であるなどと言えないのを「新古今和歌集」を例にひいて説明しているところはユニーク。何でも勅撰和歌集の大半が一人選者であり、多数決でも合議でもなかったそうです。

電気連合の調査など紹介していますが、先進諸国間で労働量や査定など比較調査することはかなり困難なことらしい。2カ国間でも、同質のサンプルで、同じような深さと方法により調べた研究は限られるとあります。労働力調査についても日本が毎月世帯で聞くところ、西欧では年1回なんて国もあったりして、立派過ぎる日本の統計と他国の統計とを単純に国際比較できないと述べています。

多少古いが、日米におけるある調査結果の分析として、「米国の生産労働者にほとんど査定がなく、日本のほうがはるかに広い範囲の人に査定が適用されている」「米国に比べて日本人労働者は醒めた目で会社や仕事をみている」ことなどを挙げています。

生産ラインの労働者と違い、家に仕事を持ち帰れるホワイトカラーの労働量を正確に計ることはできない。それにもかかわらず、「個人間競争」を促すために、働きぶりを数値化して個人に差をつけようとすると、短期の業績のみが注目されることになり、長期の人材形成が困難になる。また、結果が出るまで時間のかかる研究開発事業に対する国の補助が過小になってしまう。

要点を一言で言えば、浅い分析からの結論に惑わされてはいけない、でしょうか。
目次と本文の前後を見るだけでもだいたい内容をつかめると思います。
by itsumohappy  at 23:54 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

No title

作太郎さん
お持ちなんですね(^^)
せっかく買って読まないのも何かもったいない?ような・・・。
でもたくさん書籍を読まなければならない日常、時間を
できるだけ節約したいですよね。時間、返ってきませんもんね。
by hiro 2009/06/25 00:29  URL [ 編集 ]

読書時間の節約

この本、ぼくの手元にもあるけれど、まだ読んでいません。hiro さんの日記を拝見して,読んだような気になりましたので、もう読まなくてもいいかな。
by 作太郎 2009/06/24 11:31  URL [ 編集 ]
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する

最近のコメント
リンク
このブログをリンクに追加する
カテゴリー
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

RSSフィード
最近のトラックバック