『北米体験再考』

鶴見俊輔著。探したら倉庫にあった。1971年の発行です(岩波新書)。挟まっていたリーフレットを見ると値段150円でした。

ハーヴァードに通っていた著者は、敵性外国人としてFBIに連行された当時19歳でした。留置所で卒論を仕上げ、「日本が負けるときに日本にいたい」から捕虜交換船で帰国を選んだ、という随分冷静な19歳。監獄での扱われ方からでもその国のデモクラシー度を知ることができると分析しています。

はじめ、当時の思い出に関する本なのかな?と思いましたが、これは、北米における思想の流れを先住民族、黒人等マイノリティーからの視点も交えながら考察する本ですね。ご自身の北米滞在時にはその視点を持っていなかったことを振り返りつつ、現在の社会(ベトナム戦争中の1970年前後)で、既存の思想をたのみとするのではなく「今つくられつつあるものの可能性」に着目して、視野を広げていきたいと語っています。その姿勢のあらわれのひとつがベ平連の活動なわけですね。

解説されている19世紀の思想家たち、エマソンとかソローとかずいぶん謙虚です。竹林にひっそり住む賢人みたい。けれども鶴見氏は、これら賢人の思想の影響を強く受けた人々が、必ずしものち社会に理想的なものをもたらすとは限らない、と指摘しています。

米国史の重要トピック、公民権運動のことも当然記しています。3人の失踪した活動家の話は、映画『ミシシッピー・バーニング』で観たなぁ。バスで黒人は白人に席を譲れ、なんて時代から比べたら今は差別問題は表向きかなり解消されたんでしょう。でも、本当のところはどんなもんなのか、米国に住んだこともない私には想像もつきませんが・・・。

この本で、ハワード・ジンという名前を全く忘れていたことに気づきました。学校時代、民衆のアメリカ史かなんかに関するレポートを書かされたのを突然思い出して。ということはジン氏の著書も読んだのかしらん。ずいぶん昔の人だと思いましたけど、まだ存命だった。というか鶴見氏と同い年でした。
by itsumohappy  at 00:39 |   |  comment (3)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

「とりあえず、仕事を投げ出さない人を望みます。」それはそうですが、まず、金持ちしか政治家になれないのを何とかせねば・・。
by FORZA 2008/10/24 23:54  URL [ 編集 ]

FORZAさん
復活されましたか~

凡人がよいですか(^^) そういえば軍人凡人変人
なんて言っていた人がいましたね。
世の中複雑怪奇になりすぎて、どんな為政者が
いいかもうわかりません・・。わが国のえらい
政治家たちは感覚がずれてそうだという気は
しますねぇ。とりあえず、仕事を投げ出さない
人を望みます。
by hiro 2008/10/24 00:46  URL [ 編集 ]

難しい議題ですねぇ・・。何か斉国の首都臨し(りんしと呼ぶが、「し」の漢字が出ない)を思い出します。荘子と恵子という論敵のやりとり。まず荘子のほうは極端な道家思想家。思想そのものを悪とみなし、無為自然を尊び、無用のものほど素晴らしく、有用なことは害であり、能ある鷹は積極的に爪を隠して社会にあまり関わるな説いた人。一方、恵子のほうは、名家思想の人。名家というのは、数多溢れる人や物や情報の中から、より信頼のおけるものを選り分け、重みづけをし、国を治めるうえで最も有益な方針を選び出すために研究を重ねてきた、論理学派のことです。僕の考えとしては、どちらも正しくて、どちらも間違い。右端・左端に偏り過ぎた思想です。でもどちらか選べと言われたら、荘子のほうですかねぇ・・。凡人が治める世の中のほうが、一部の金持ち連中に偏った政治はしなさそうだから。どう思いますか?
by FORZA 2008/10/24 00:14  URL [ 編集 ]
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