『強制収容所のバイオリニスト』

ヘレナ・ドゥニチ・ニヴインスカ著(2016年)。副題「ビルケナウ女性音楽隊員の回想」。
著者は、1915年、ポーランドのルヴフ(現ウクライナのリヴィウ)生まれ。アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所などで1年3カ月過ごしました。

1939年9月、ドイツに続きソ連がポーランドに侵攻し、いっときソ連がルヴフを占領したものの、独ソ戦開始後ドイツが占領しました。著者は、反ナチス活動家と知らずに彼らを家に間借りさせたという理由で、母親とともに43年、逮捕され、オシフィエンチム(アウシュヴィッツ)に移送されました。

バイオリンを学んでいた著者は、幸い収容所の音楽隊に所属することができ、一般の囚人よりも衣食住に恵まれて生き延びましたが、一般棟にいた母親は病死。収容所の描写は、映画「シンドラーのリスト」の場面と同じです。残虐とか残酷とかそんな言葉ではとても言い表せません。

収容所音楽隊では、著名なバイオリニスト、アルマ・ロゼ(マーラーの姪)がカポ(監督)をしていました。ロゼの指揮で、著者ら隊員は、囚人が収容所に出入りする際に行進曲を演奏しました。移送されたばかりのユダヤ人が、悲劇的運命を知らず、降車場からまっすぐガス室に進んでいる脇でも演奏に没頭し、周囲の悲劇に気づかないふりをし続けたとあります。自分を守るためにそうせざるを得ませんでした。

45年5月に収容所から解放されましたが、身内を失い家もない著者は、音楽隊仲間の助けを得て生活し、やがて音楽関係の仕事につくことができました。音楽隊に入っていたことで戦後、収容所体験者からも非体験者からも白い目で見られたそうです。戦争時代の記憶を消し去りたいと思っていましたが、数少ない強制収容所の生き残りの一人として、次世代に当時のことを知ってほしいと願い、2012年になってこの回想記の作成に取り組みました。今、100歳を超えて存命のようです。
by itsumohappy  at 21:17 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

バイオリンが身を助けた。

作太郎さん こんにちは
いえー たまたま職場の図書館で新着で置いてあったので借りてみました。
楽団があったのは聞いたことありますが、音楽の目的が私が思っていたこととは違いました‥。メンバーリストが出ていたので、そこに載っていたかもしれません(もう返してしまって確認できませんが)。

このナチスの最終解決の発想と手段がどうしても理解しがたいのです。ドイツ人ならではなのか、たまたまドイツ人だったのか、、 
図書館にフランクルの戯曲(「夜と霧」の初版に入っていたもの)も新着になっていましたが、たて続けに読むのはきつく、借りませんでした。
by hiro 2017/09/01 16:41  URL [ 編集 ]

死の国の音楽隊

読書家のあなたのことですから、すでにご存知でしょうが、この系列の書物の最初は、『アウシュヴィッツの奇跡──死の国の音楽隊』です。シモン・ラックスとルネ・クーディーの作品です。アニタ・ラスカー=ウォルフィッシュの『チェロを弾く少女アニタ──アウシュヴィッツを生き抜いた女性の手記』は、おそらくニヴインスカと同僚であったかも知れません。
by 作 2017/08/31 20:28  URL [ 編集 ]
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