『地上より永遠に』

ジェームズ・ジョーンズ作。原作は1951年に出版されました。
映画が有名ですが、映画では、内容が多少改変され、また、軍隊の描写も一部省かれています。
ハワイ・オアフ島の陸軍スコーフィールド基地周辺を舞台とする将兵の物語。真珠湾攻撃までの10か月間を丹念に描いています。かなりのボリュームです(文庫本4冊)。冗長と思える部分も多々あって、読み進めるのに苦心します。同じ作者の長編でも『シン・レッド・ライン』のほうが読みやすい。

兵卒の目線で話が展開するという意味で、プルーが一応の主人公ですが、曹長ウォーデンも主人公といえます。この二人の対比がポイントです。プルーは、30年兵(という制度が当時あった模様。30年間軍隊に仕える)として志願した、いわばばりばりの兵隊で、ひととおりの軍務をしっかりこなせるのですが、自我を通して周囲と妥協せず、常に浮いたような存在。まるで軍隊に向かない意固地タイプで、読んでいていらいらするほど。一方、ウォーデンは、プルーと心情を交わすところはあっても、表向きは組織のなかで上手く切り抜けていく実務家タイプ。下士官らしく粗野であるが、頼りになる強力な存在です。映画のB・ランカスターのイメージそのもの。

小説の山場は、営倉での暴力と真珠湾攻撃のシーンでしょう。映画で営倉の拷問がカットされたのは、それがスコーフィールド基地のロケの条件だったからだそうです。兵隊が惨殺されるところは気分がわるくてよく読めないくらいでした。
零戦が飛来してから、何をしてよいのかわからない兵隊たちが、ウォードンの指揮のもと必死で応戦する場面は面白かった、というのはなんですが、実際に見た者ならではの迫力ある描写でした。速成の応召士官は全然役に立たず、普段はぼんやりともうろくしているような老兵が冷静沈着に活躍するのです。

作者ジョーンズの家は、大恐慌により破産し、ジョーンズは大学進学を断念して陸軍を志願しました。ヨーロッパは、戦争の危険性があるが、ハワイの駐屯軍ならその心配がないということで赴任。真珠湾攻撃の後、ハワイ師団は第25歩兵師団としてガタルカナル攻防戦に投入されました。そこでジョーンズは、自分が射殺した日本兵の死体から家族の写真を発見してショックを受け、戦闘を拒否し、軍曹から一兵卒に降格されたと解説にあります。

小説について、今風に言えば全く空気を読もうとしない、それでいて組織から離れられないプルーの悲劇は現代に通じるものがあります。開戦前のハワイの様子や登場する女性たちの描き方も一筋縄ではなく興味深いです。この小説で美しく描かれているものは浜の景観くらいです。
by itsumohappy  at 16:15 |   |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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