『マイケル・K』 

J・M・クッツェー作(1983年)。
南アフリカの作家です。初めて読みました。ケープタウン、という地名で南アが舞台とわかりますが、それ以外の状況(時代背景など)は不明なまま読みました。戦争、囚人、外出禁止令という言葉の端々からどうやら内戦状態にあるというのはうかがえます。解説によると、1980年前後で、アパルトヘイトの体制下ではあるが、アフリカ民族会議 (ANC) による民族解放運動が起きていた時代、ということです。

人種を表現する記述は全く出てきませんが、当然マイケルは黒人、兵士や病院の医者たちは白人。戦時下にあってマイケルは、自由な暮らしを求めて放浪します。誰の奴隷にも従者にもならず、押し付けられた食事ではなく、自分の食べたいものだけを食べる、という単純な希望をかなえるのがどれだけ困難なことか。ただ「耕す者」でありたいだけなのですが、移動もままならない。野菜の種を大事に持ち歩くシーンが痛ましいです。

描写が淡々としています。自由を求めての闘争ではなく、一見、逃走のスタイルであることで却って鋭い体制批判となっている小説です。



by itsumohappy  at 21:50 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

アパルトヘイト

作太郎さん こんにちは
当時の南アのことは「遠い夜明け」などの映画で知ったくらいです。

この作家はアフリカーナーでありますが、他にも人種主義政策を批判する作品がいくつかあるようです。
ノーベル文学賞を受賞していた有名な作家であることも知りませんでした。
by hiro 2016/09/25 22:23  URL [ 編集 ]

熱い時代

1980年代は、南アでアパルトヘイトの反対運動が盛り上がった時代ですね。1984年、南アフリカ教会評議会事務局長ツツ主教にノーベル平和賞が授与され、運動にさらに火がついた。

この日記を拝見して、南アの作家も一緒に戦っていたということが分かりました。
by 作 2016/09/24 21:17  URL [ 編集 ]
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