『シン・レッド・ライン』 

ジェイムズ・ジョーンズ作(1962年)。

冒頭、
「人間の営為のなかで最も偉大であり、かつ英雄的なものである戦争に、本書を捧げる。戦争がわれわれに必要な喜びと興奮と刺激をいつまでも与えてくれ、英雄や大統領や指導者をもたらし、記念碑や記念館など、われわれが平和の名において彼らのために建てるものを提供しつづけてくれることを切に願って。」
という献辞があります。原題“The Thin Red Line”。アメリカ中西部の古いことわざで、正気と狂気のあいだには、一本の細く赤い線があるだけという意味です。

ジョーンズの作品は、映画化された『地上より永遠に』(1952年)が有名です。最近では見かけない本で、私は読んだことありません。高校卒業後、志願したジョーンズは、ハワイ師団の一兵士として真珠湾攻撃に遭遇。その後、ガタルカナル攻防戦で、日本軍との死闘を経験しました。

経歴も性格もまちまちな「20歳前後の坊や」から成る歩兵連隊C中隊員を主体に話が展開します。
ガタルカナルへの命がけの上陸から島の攻略まで、まさに肉弾戦に次ぐ肉弾戦です。米軍は兵器・物資ともに圧倒的な量を背景に、余裕で勝ったように思っていましたが、そんな感じはしません。水が前方に届かず、枯渇して苦しむ場面があります。

激しい戦闘と過酷な熱帯の様相とともに、人物の描写がリアルです。
見当違いの稚拙な作戦で空しく死ぬ将兵、上官の無能さを見抜きながら解任される優秀な将校、恐怖にかられ、お母さん!と叫びながら半狂乱で突撃する兵士。
目の前の人間を殺せる自信がなかった兵士は、次第に血を求める狂気にとりつかれて、無抵抗の日本兵を射殺し、持ち物を略奪して楽しむ。一方、平時であれば知ることもない、むき出しにされていく心のありように、いつまで「人間」でいることができるか悩む兵士は、「戦争はもうたくさんだ」と叫ぶ。
体験者が語る生き地獄の本です。

by itsumohappy  at 10:08 |   |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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