『黒部の山賊 アルプスの怪』

伊藤正一著。北アルプス最奥である黒部源流地帯で70年を過ごした方です。
1964年に刊行された内容に新たな写真等を加えて再出版されました。

著者は、もともとジェットエンジンの発明に没頭していたけれども、終戦で研究の見込みがたたず、登山と探検で過ごそうと決意しました。1946年、三俣蓮華小屋(三俣山荘)、水晶小屋を譲り受けて経営し、また、湯俣山荘、雲の平山荘を建設しました。荷揚げを楽にするため、早くも1954年、アルプスで初めて飛行機による物資の空輸を試みました。パイロットは、陸軍で急降下爆撃をしていたそうです。

お話は、戦死した小屋の持ち主の権利を買い、屋根や柱がほとんど持ち去られた小屋を再建するところから始まります。
買い取ったはずの小屋に殺人嫌疑のかかった「山賊」とその一味が住み着いており、自分の小屋に宿泊料を払うはめになったこと、「山賊」らと小屋づくりを行ったことなど面白いエピソードが続きます。その頃、山賊の凶暴な噂が町に流布して、乱獲するような悪い猟師は入らず、黒部は荒らされませんでした。

本に登場する山賊こと猟師のうち、富士弥兄弟は、大正初年に黒部開発のため3年がかりで開削された東信歩道(日電歩道)づくりに携わっていました。 
黒部は天候が崩れると廊下の水位が10~20m上がり、鉄砲水で大木が粉砕されたり尾根を乗り越えたりという厳しい環境です。そんなところで長年、獣や魚をとって生活していれば山賊みたいになりますね。

怪談のひとつに、とんでもない方向から明瞭に聞こえるオーイオーイという声に反応してはならないとあります。ある日、そんな声に引きつけられて谷に吸い込まれそうになった…その日は、遭難死した名猟師、小林喜作の命日でした。山で聞こえるのはヤッホーでなければだめです。
また、葬っても葬っても1年おきに出てくる白骨って嫌ですね‥。これは自然現象らしいですが。

動物に関するお話も多いです。著者が、熊に餌をやったら小屋の戸をノックするようになってしまったこと、飼い犬が時々犬好きな主人のいる槍ヶ岳山荘に脱走するが、人が8時間かかるところ1時間で行ってしまうこと、山賊のイワナ釣りの華麗な技や豪快なウサギ汁の作り方など印象的でした。
by itsumohappy  at 23:54 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

秘境

作太郎さん
沢登り+山登りでしょうか、私には一生見ることのない景色のような。雲ノ平は映像などで雰囲気は何となく想像しますが、原流域となるとスケール感がわかりません。きっと忘れられない光景だと思います。

本に出てくる富士弥など「山賊」猟師は越冬したようですが、「手下」がいたのでたまに町からの調達品もあったのでしょう。
by hiro 2014/08/13 09:04  URL [ 編集 ]

赤木沢

黒部源流域はすばらしいところです。わたしも黒部川の上流を詰めて、雲ノ平に出て、さらに赤木沢を詰めたあと、太郎山まで縦走したことがあります。あの辺で一生暮らすのはすばらしいですが、冬は食料が得られませんね。冬眠している熊を引きずり出して食べないといけません。
by 作 2014/08/12 12:28  URL [ 編集 ]
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