『キャパの十字架』

沢木耕太郎著(2013年)。
ロバート・キャパ(1913-1954)が1936年にスペイン内乱下で撮った悲劇的な写真「崩れ落ちる兵士」の謎にせまるノンフィクションです。

capa_life.jpg
当時からキャパはこの写真について語らず、写真の真贋をめぐって、これまでもキャパの伝記作家その他よりあれこれ取沙汰されてきました。著者は、掲載雑誌を入手して写真を分析する一方、スペインの郷土史家や学者、現地住民の協力を得て、撮影場所「エスペホ」の丘陵地で当時のカメラで撮るなど取材を続けました。

写真が撮影された時期に、エスペホでは戦闘がありませんでした。「崩れ落ちる兵士」の撮影時、その前後に「崩れ落ちる兵士」を含む兵士らの写真がいくつか撮られており、著者は、それらの分析(影や雲の位置関係、銃の状態など)から、「崩れ落ちる兵士」は戦闘における写真ではなく、演習、或いは兵士らに頼んで演じてもらっている状況下で撮られたものと推定しています。
 
また、当時の銃(スパニッシュ・モーゼル)では数十発撃たないと斜面を駆け下りる兵士を後方に吹き飛ばせないこと、写真サイズの比率の違いからトリミングを考慮してもライカではなくローライフレックスで撮られたこと、キャパがライカを、キャパと同行取材していたゲルダ・タローがローライを通常使っていたこと、前後の「戦闘」写真から推定して約1秒の間に位置を変え、カメラを変えてキャパが当該の写真を撮ることは不可能であること等々の見解が記されています。

兵士は、打たれて倒れたのではなく、偶然斜面で滑って倒れた。そして、その瞬間の写真を撮ったのはキャパではなかった。
「マグナム」からは、「必ずしも沢木氏の本の内容を認めているわけではない」との一文をこの本に入れてほしいの申し入れがあったそうです。
後日、著者は、斜面での兵士たちの動きをCGで検証し、その内容はNHKで放映されました。たまたま私はその番組を見ていましたが、詳細なCG分析は説得力がありました。そして、何となく、何だかいろいろわかりすぎないほうがいいような気もするなぁと感じました。
by itsumohappy  at 22:26 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

新説

作太郎さん こんばんは。
取材で地元の人が「スペイン人なら頼まれれば(撃たれて)死んだふりだってする」と話したというのが印象的でした。

たまたま見事な瞬間が撮れちゃったんですね・・。ゲルダが撮ったと仮定すると、もろもろの事柄がしっくり説明/納得できる、とあります。
by hiro 2013/08/02 22:57  URL [ 編集 ]

周知の……

この写真がやらせだというのは、かなり前から判っていたことですが、こんな書物が出たのですね。
by 作 2013/07/31 22:35  URL [ 編集 ]
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