『流れる』

幸田文作(1955年)。
読みかけのまま放置している小説がたくさんあって、これもそのひとつでした。ぽんぽんと調子よく進むセリフ、主語の省かれた簡潔な表現はよいのですが、慣れないと読みにくくなってしまい、他の本に手を出しているうちにストップ。たまたま読んでいた版が原文表記?だったせいもあるかな。「あなたこゝへ来るまへ何してなさつた。…人間どこにゐても過去つてものがついて廻りますからな。隠せないものですよほんたうに。」みたいな調子で。多少つっかえましたが、このたび読み終えました。

傾き加減の芸者置屋で女中として働くことになった「眼のいいしろうと」女性を主人公に、花街のあれこれや落ち目芸者の哀しき日々を描いた小説です。このお話は体験していないと絶対に書けないものです。小説では場所の見当がつかず、私は向島あたりかな?と思っていましたが、なんでも幸田文は、数か月、柳橋の芸者置屋で住込女中をしていたとありました。
小説のように、過去を隠し、鋭い観察の日々を送っていたのでしょうが、それが小説を書く取材?のためだったかは知りません。

しぐさについての描写が印象に残ります。くろうとは、「ほれぼれさせて起きるもんだ」ということで、「しつとりとした起きあがり」の様相を書いている文など初めて見るかも~。
気が利きそうな女中なのであちこちで目をつけられ、こっちに来ないかとスカウトされる場面が出てきますが、これも実際の体験でしょう。露伴からお掃除全般のメソッドを徹底的に叩き込まれた著者ですから。

花街に生きる人のつらさ、悲しさをテーマのひとつとして取り上げても、やはり立ち位置が異なるので、気の毒な方々だけれどもやはりひとごと、風に見えなくもないまとめ方になってしまうのは仕方ないかな。
by itsumohappy  at 17:44 |   |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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