『銃・病原菌・鉄』

ジャレド・ダイアモンド著(2000年)。著者は、UCLAロサンゼルス校教授(生理学者、生物地理学者)。 
大作です。論の裏づけとなる実地調査の記述も多く、けっこうなボリューム。ただ、精読しなくても結論部分を追っていきやすいつくりなので、とりあえず読んだ気になります(^^;

世界の様々な民族がそれぞれに異なる歴史の経路をたどったのはなぜか、世界の富と権力が不均衡な状態にあるのはなぜかを、1万3千年の人類史から解読しようというのがこの本のテーマです。遺伝学、生物学、文化人類学、言語学、文化・政治史の多岐にわたる知見から論を展開しています。

著者は、世に発展した国と未だ発展途上にある国が存在するのは、人種の生物的差異(優劣)によるものではないという立場を明確にしたうえで、地理的要因、環境が、人類の歴史に与えた影響が大きかったと分析しています。

ユーラシア大陸が、人間社会がもっとも早く発展した地域です。その理由として、
○早くから食糧生産地域であった(食糧生産を独自開始したほんの数箇所の地域のひとつ)
○家畜化可能な野生動物の原種(牛、豚、羊等14種)が集中的に分布していた(南・北米には5種類だけ)
○食糧生産を先んじて始めた人々は、他地域の人より先に銃器等の技術を発達させ、また、疫病(家畜から人間に移った病原菌)に対する免疫を持っていた
○食料生産の技術(新しい技術)は、南北方向より東西方向に早く伝わる
○食糧生産によって余剰食糧が生まれ、人口が増大した結果、労働分化や社会階層の形成が可能となった(政治機構の存在により優位に立てた)
○文字による情報伝達があった(文字が誕生するには数千年にわたる食糧生産の歴史が必要で、狩猟採集民の社会では文字は発達しなかった)

等々が挙げられています。
銃、読み書き、政治機構にヨーロッパの優位性がありました。世界史上の一大トピックという「スペインのインカ征服」にそれが見られます。ピサロ率いる168人のスペイン部隊は、4万人に守られたインカ皇帝を捕らえました。南米侵略にあたり現地の情報を持ち、銃器や騎馬の軍事技術を持っていたスペイン人に大陸の先住民は勝てなかった。
南・北米では、欧州から持ち込まれた天然痘などの疫病により、コロンブスによる大陸発見以前の人口の95%が葬り去られたそうです。

ユーラシア、なかでもヨーロッパが先んじて発展したことには、環境要因に加えて政治・文化的な要因が重要な役割を果たしています。
西アジアの肥沃三日月地帯は、農耕をリードしていたけれども、域内で帝国が次々興り、権力の中枢はその地帯から出ませんでした。アレクサンダー東征以降、より大きな権力はさらに西へ移りました。
また、中国の場合は、河川により地域の地理的結びつきが強く、技術が伝播し、早くから政治的統一もなされていたけれども、それが却ってマイナスに働いたとあります。一人の支配者の決定が、全国の技術革新などの流れを止めてしまう場合があります。例えば、15世紀初頭、中国はヨーロッパに先んじて、船団をアフリカまで送っていたのにも関わらず、15世紀半ばに国内の政治的争いにより船団の派遣は中止されてしまいました。
一方、大航海時代の欧州は全体としての政治的統一はなされていませんでした。コロンブスは探検船団派遣をかなえられる王侯を探し、4番目に訪ねたスペイン君主の助力により目的を遂げました。
地理的な結びつきが強すぎず、弱すぎず、中程度の地域で、発展のスピードが速かったというわけです。
by itsumohappy  at 13:16 |   |  comment (0)  |  trackback (0)  |  page top ↑
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