『原発ジプシー』

堀江邦夫著(2011年5月)。

返さなければならない本がたくさんたまっていましたが、やっと一段落。今年最後の読書はこれになってしまった。1979年に出版されたものの増補改訂版です。

フリーライターだった著者は取材であることを隠して、美浜、福島第一、敦賀の原発で日雇い労働者として働き、定期検査での過酷な作業と被ばくの恐怖におびえる日々を記録しました。原発の「素顔」を自身の目で確かめたかったとあります。

最先端の技術の集大成である原発の運転を実質支えているのは、下請けの労働者。この本に書かれているのは、原発の商業運転が開始された1966年から10年ほど経った頃の様相ですが、現在はどれだけ労働環境が良くなっているのか気になるところです。検査を考慮して設計されているとは思えない狭い空間のなか、呼吸もままならぬ状態で線量計がパンク(規定の線量を超えること)する前に必死で作業を行う。なぜか定期検査用の電源がなく、検査のたびにケーブルを引かなければならず、被ばくの頻度が増える。全国からかき集められた日雇い労働者は、親方、或いは親方+その親方にピンはねされて、わずかな賃金しか得られない、といった話が続きます。

作業中に肋骨を折り、倒れて苦しむ著者に、見回りしている東電の社員にばれないよう、作業主任から、立つように指示されたという体験が出ています。事故が起きても、安全性をアピールする電力会社の手前、隠蔽されるのが普通だったようで、著者の場合も、救急車を呼んでくれず、労災扱いされませんでした。

ろくに英語も話せない「黒人労働者」が原子炉内など高汚染エリアで作業していたという話が紹介されています。何でもGEが集めてきた前科者などで、浴びる線量(日本人の10倍以上)に比例して高い賃金で働いていたとか。

この本が出版されたとき、原発内の作業はコンピュータやロボットがやっていると思った、衝撃的だといった一般読者の反応があったそうですが、著者の元労働者仲間たちからは、「あんたの体験などまだまだ良いほうだ」と言われたそうです。

『原子力白書』などの資料によれば、2008年度における電力会社社員の被ばく量は全体の約3%、ということで、主に「協力会社」の労働者たちが放射能にさらされる作業を行っているという構図は今でも変わっていないようです。
元東電社員の蓮池さんも書いていたことですが、原発の仕事を去った労働者に対しては、医学面での追跡調査が今でも一切されていない、という点が気になります。

このたびの福島第一原発の事故が起きるまで、原発のことも自分が使っている電気のことも別に関心ありませんでした。原発については、泊原発を見学したときに、使用済み燃料を冷やしているプールを見て、何とも言いようのない不気味さを感じたことくらいはあります。しかし、原発に作業ロボットがないなんて知りませんでした。
今年、現代の黙示録といいますか、本当に破滅というものがあるのだ、と見知って、だからと言って何もできないんですけど、少なくとももう無関心ではいられないのだと思うばかりです。
by itsumohappy  at 18:36 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

リスクを減らす方法は・・

作太郎さん
おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

福島の事故があったとき、中に投入するロボットが存在しないっていうのが信じられませんでした。もう少しリスクを避けられる方法はないものでしょうか。機密をたてに、都合のよくないことは表に出ないようにしてきたつけがどん!と来てしまったかのようです。

by hiro 2012/01/01 22:37  URL [ 編集 ]

労働災害は未来を予告している

原発労働者の被爆や白血病の話は、前々から知られていましたが、やはり「福島」を契機にして広く関心が持たれるようになったと思います。原発震災は、日常的な労働災害の中で、すでに予告されていたように思われてなりません。
by 作 2012/01/01 10:15  URL [ 編集 ]
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