『終わらざる夏』

浅田次郎作(2010年)。
1945年8月18日に始まった、千島の最北端・占守島での戦いを運命づけられた兵隊たちの物語。

43年5月のアッツ島陥落により、米軍がアリューシャンの島々をたどって来襲するのに備え、北千島には満州から陸軍最強の戦車部隊が配置されていました。44年後半から翌年にかけて、北千島の航空部隊・海軍艦艇のほぼ全てが本土決戦のため転出し、占守や幌筵島には陸上兵力だけ残されました。彼ら関東軍の精兵を動かそうにも手段がもはやない、という状況が物語の背景。そして、3人の主な登場人物はみな、戦局の悪化により根こそぎ動員された一般人という設定です。主人公の一人は、年限ぎりぎりの45歳と11ヶ月で召集されます。

浅田次郎らしい浪花節的ノリ?がもちろん出てきますが、この本で印象に残るのは、徴兵された人々やその家族の嘆き、徴兵事務に携わる人々の苦しみを描いている部分でしょうか。 大本営の参謀が作った動員計画書に基づき、聯隊区司令部下士官が書いた召集令状を村役場の兵事係が家に届ける。そして、赤紙をもらえば、おめでとう、と言われて出征です。

著者は、この本の執筆に当たり、資料は読んだが当事者にはあえて会わず、許される範囲で「物語」にしたそうです。しかしながら、現実が悲惨すぎるので、浅田節は抑えて、ひたすらリアルに展開したほうがよかったような気もします・・。ソ連兵の魂が飛んで日本の子を助けるみたいな部分など何だか違和感ありました。ポイントとなるH・ミラーの小説も戦後出版されたものでは?と思うし。

戦争は終わったはずなのに、占守島で孤立無援の戦いを強いられ、「武装解除」後に捕虜となった日本兵は、シベリアに送られたそうです。兵隊でもずいぶん運に差があるものです。
私の大叔父は老兵だったのですが、自分は跡取りで家には寄る辺のない年寄りなどだけ残されて・・みたいに訴えたら、ほどなくして上官がなんと家に帰してくれたそうです。華々しく出征した手前、恥ずかしくてすぐ帰れず、奥鬼怒あたりの温泉場にしばらく潜伏?したのち、帰還しました。最寄り駅に服を持ってこさせてトイレで軍服から着替えたという、ちょっととほほ・・な感じですけれど。そういう幸運な人もいたのですが・・。
by itsumohappy  at 22:59 |   |  comment (2)  |  trackback (0)  |  page top ↑
Comments

No title

本当にそうですねー それにしても何百万もの犠牲は大きすぎたなぁと思います。。。
by hiro 2011/08/24 22:53  URL [ 編集 ]

No title

今の時代に生まれて感謝とともに、今ここに生まれているのは、戦争中に頑張ってくれたご先祖様に感謝ですね。
by maccha12 2011/08/23 06:59  URL [ 編集 ]
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